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ナラティブレポート発表会 Workshop

ライン鳥

 

 

ナラティブレポート発表会

 

「看護師なのに 大切なことを・・・」

S.H

今年で看護師経験年数が30年になります。その中で内科外来、内視鏡室での勤務が長かったです。
当時の内視鏡室は、現在下部内視鏡を行なう前処置室として使用している部屋でした。狭くて、暗い部屋にその当時は、こだわりの強い先生も多く、患者さんの体位や、内視鏡機械、ゴミ箱、膿盆の位置も決まっていました。場所が違っていると注意されるので、「覚えるまでは印をつけておく方がいいよ」と先輩からの申し送りもありました。内視鏡室は、看護師1人の配置だったので毎日緊張しながら「失敗しないように・・・先生に怒られないように・・・」と思いながら仕事をしていました。
ある日、患者さんが内視鏡室を出るときに「先生ありがとうございました」と言って部屋を出て行きました。
いつもの事でしたが「私は、何をしているのかな?」と思う感情に気付きました。「内視鏡の業務に慣れてきたのかな?でも・・・」と言う思いが日々募ってきました。その時に「内視鏡看護セミナー」が開催される事を知り、参加してみることにしました。研修後、看護師なのに「看護」という視点を持っていなかった事に気付くことができました。それから、検査を受ける患者さん、家族と積極的に会話することを心がけました。検査に対する不安や緊張の軽減、検査中の観察と声掛け、タッチング、検査後のケアとねぎらいを伝えるようにしました。始めはぎこちなかったと思いますが。少しずつコツをつかめてきたと感じる頃に、ある患者さんから「検査中、背中をさすってくれて安心できたよ。ありがとう」と言ってくれました。本当に嬉しくて私も「ありがとうございます」とお礼を伝えたことを覚えています。不安を軽減することを第一に考えた看護を実践したことで私自身が成長したと実感する事ができました。

 

 

 

「何かおかしい、と気付くこと」

U.H

これは僕が18歳で看護助手時代の話しになります。病棟で働いていた僕がある時患者さんの異変に気が付きます。それは食事を自己摂取できる患者さんで夕食後にホールを歩いておられたんですが、ハッキリと苦しい様子はなく、何も言われず、顔色もさほど悪くない様でしたが、僕は「何かおかしい」とその時思ったんです。僕はとりあえずその患者さんに声をかけました。「大丈夫ですか」と。すると普段話せる患者さんですが何も言わずただ首を横に振りました。根拠はなかったんですが僕は「これはまずいんじゃないか」と思いました。そしてどうしたらいいか分からず、とにかく人を呼ぼうと思い、咄嗟に「呼吸困難です」と大声で叫んだことは覚えています。すると詰所やその他の場所から看護師の方が直ぐに2名駆けつけてくれました。僕の発見から1分も経たずに応援が来てくれましたが、来てくれた時には患者さんの顔面は蒼白し、その場で倒れました。応援の看護師2名がハイムリック法や吸引等の処置を行い、喉に詰まっていた物を吐き出すことが出来ました。ほんの一瞬の出来事だったので、とにかく驚くことしか出来ませんでしたが、その時「何かおかしい」と気付くことが出来てホントに良かったと思っています。気が付くことの大切さを学べました。これ以来、些細なことでも気が付けるように日々の観察を行っています。

 

 

 

「患者さんの尊厳」

Y.S

看護師一年目の夏、胃瘻の患者さんに注入食を「自然の摂理に反する」と拒否された経験は衝撃的でした。当時私は、先輩に相談し「仕事だから必要性を説明していって」と指示を受け注入食を施行しました。生命の維持に必要な医療行為と、患者さんの「人間らしくありたい」と思いの間でどうすることが正しいのか葛藤しました。
この出来事を通し、医療は一方的では無く、患者さんの意思と価値観を尊重し対話を通して寄り添うことの重要性を痛感しました。また、家族の「なんとかしたい」と一生懸命な気持ちが患者さんにとって心の負担になる事があると気付きました。患者さんの思いと家族の思いその両方を受け止め、すり合わせ、うまく着地点を見出せる様になりたいと思いました。
この出来事が、患者さん主体の看護とは何か、どうすることが本当にその人の為になるのかを考え続ける原点です。

国保野上厚生総合病院
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